非行を繰り返す息子を変えた、たった1杯のココア
こんにちは、浅田アルマジロ(@asada_armadillo)です。
子育て中のお母さん、お父さん、いつもお疲れ様です。
突然ですが、もしあなたのお子さんが何か悩んでいるようで、でも話してくれない時どうしますか?
もしかしたらいじめられているのかもしれないと、不安になるかもしれません。
そんな時とっておきの聴く力を
持つことができる本をご紹介します。
【目次】
心室中核欠損症だった息子
長男は心臓に欠陥を持って生まれ、生後10カ月までに2回も大きな手術をして、命をとりとめました。
そのため片時も目が離せず、過保護に育ててしまったせいか、引っ込み思案でおとなしい子に育ちました。
長男は、小学校、中学校を通じていじめに遭い、長じては不良グループに入って、非行や自傷行為を繰り返していました。
その頃になると、家のことと仕事と、長男の行為の後始末――警察への迎えと謝罪の日々で疲れ果てていました。
毎日、長男を殺して私も死のうと思うくらい追いつめられていたのです。
本来近親者へのカウンセリングは、タブーです。
しかしもう、長男を我が子とは思うまいと覚悟を決め、わずかな機会をとらえて彼の話を本気で聴くことにしました。
「聴く」チャンスを逃さないための準備
カウンセリングをする際は、「あなたをお待ちしていましたよ」と、両手を広げてお迎えするような気持ちと場面をつくるところから始まります。
部屋の空気を入れ替え、室温を快適にして、聴き手である自分を信頼してもらえるように、環境もできるだけ配慮して整えます。
しかし、家の中では「今からカウンセリングを始めます」みたいなわけにはいきません。
いつ「聴く」が必要になるかは、相手次第。
ふと、「何か飲む?」と、声をかけてはどうだろう、という考えが浮かびました。
当時の我が家には、水とお茶くらいしか飲み物はありませんでした。
ジュースなどがあると、家族のことを考えずに長男が全部飲んでしまう為、買うのをやめていたのです。
そうだ!あの子が幼い頃、大好きだったココアも用意しよう!
一杯のココア
「お母さん、あのね。今日先輩がさ~。お金を貸してほしいって言うんだけど」
帰宅した長男が、台所でカレーをつくっている私に声をかけてきたのです。
いえ、もしかしたらいつもそうやって声をかけてくれていたのに、私のほうが気づかず無視していたのかもしれません。
(よし、今だ!今がチャンスだ!)
いきなり訪れたチャンスに心を震わせながら、私は丁寧に言葉を返しました。
「え~そうなんだ?おかえり。何か飲む?」
「何ってうちにはいつも水くらいしかないじゃない」
「あるかもよ?言ってごらん?」
息子はいぶかしげな表情で、キョロキョロと探るように台所を見まわしました。
そして私を試すようにこう言いました。
「じゃあ、ココア」
「!」
「先輩にお金を持っていくのはやめるよ」
実のところ、話の内容はよく覚えていません。
ただ息子の悪事自慢を否定せず、丁寧に聞いたことは覚えています。
しかし、だんだんと怒りが堰を切ってあふれだしそうになります。
息子の話が聴けなくなり、限界を感じた私は「あ、お母さんお料理作らなきゃ」とその場を離れました。
どれくらい時間が経ったでしょう。私には1時間くらいにも感じられましたが、時計を見るとたった5分しか経っていませんでした。
でも、翌日も、その翌日も、根気よく話を聴くことで、長男との会話の時間は少しずつ伸び、だんだんと彼の笑顔も増えていきました。
数日後、長男がぽつりとこう言ったのときの驚きと喜びは忘れられません。
「先輩にお金を持っていくのはやめるよ」
言うことをきいてくれたから嬉しかったのではありません。
長男への「聴く」を始めて以来、私は彼に「悪い仲間との付き合いをやめてほしい」というようなことは一言も口に出しませんでした。
私は、長男が自分で「やめる」と決めたことに深い感動を覚えたのです。
20年待っていたたったの「5分」
それからどのくらい経った頃でしょうか、5~6年は過ぎていたと思います。
長男と二人でダラダラと世間話をしながらテレビを観ていると、画面に喫茶店のココアが映りました。
そのとき、彼が言った言葉を私は宝物にしています。
「そーだなぁ、たった5分かぁ。俺、20年待ってた5分だったかもなぁ」
最初は何のことかわからず、「何?」と尋ねました。
「あの日のココアの5分だよ」
思いがけない言葉に、私は胸がいっぱいになりました。
…………
如何だったでしょうか。
これが著者が「聴く力」を使って、息子さんと向き合った実際の物語です。
このサイトを見ているということは、あなたもご家族との関係に悩んでいるのかもしれません。
もしくはお子さんとの将来に不安を抱えているのかもしれません。
この物語で使用されている技法はカール・ロジャースという方が確立したカウンセリングの「傾聴」というものです。
カウンセリングは通常、相談者の悩みを傾聴し、分析し、問題解決のために助言を行ったりします。
一方、「傾聴カウンセリング」は傾聴に特化しています。
相談者の方に安心して心の中をだしきっていただくための方法です。
「傾聴」では「相手の中に答えがある」ということを信じて、相手から答えを引き出します。
そのため先ほどの話では息子さん自身から「先輩にお金を持っていくのはやめるよ」という言葉が出たんですね。
「カウンセリングなんて経験ないし、上手なアドバイスができるか不安」と思っている方でも大丈夫です。
「答えは相手から引き出す」のです。
初めはうまくいかないこともあるかもしれません。
でもこの本を手に取って、「傾聴」を試みていればあなたも少しずつ「何でも話せる相手」になれるかもしれません。
是非こちらを手に取ってみてください。
怒りっぽい方でもできる
著者の辰 由加さんは息子さんの話を怒りもせず、なんでも肯定的に聞くなんて、きっと仏のように怒らない方なんだ。
と思った方はいませんか?
残念ながら(?)辰 由加さんは仏でも聖人君子でもないようです。
この本の中でも書かれています。
「ここにあったお金知らない?」「ここにあった貯金箱の中身を知らない?」「弟のお年玉知らない?」と長男を詰問する毎日。
家の中に泥棒がいるようなもので、長男とのいさかいが頻繁になりました。「ねえ、私たちこんなに困ってるよ?もう盗んだりするのやめてくれる?家に泥棒がいるのは気が休まらない!」
泣いて叫ぶ私に、「家族に興味ないし、なんかあったら死ねばすむ」と口答えされたこともあります。
私は悲しみと同時に怒りが抑えきれず、長男をげんこつでぶん殴りました。
悲しみと怒りが抑えきれず、思わず手が出てしまったことにとても後悔しているそうです。
そもそも辰 由加さんはカウンセラーになろうと思って専門学校に通ったわけでもなく、誰かに誘われたからでもありません。
「息子の話を聴ける母親」になりたいと強く思っていたことがきっかけで、カウンセラー養成講座に受講の申し込みをしたそうです。
そのカウンセラー養成講座で出会ったのが「傾聴」だそうです。
相手が話したいことを自由に話せるよう、受容的・共感的な態度で相手に寄り添うこのカウンセリング技法は「息子の話を聴ける母親になりたい」という願いにぴったりだったのでしょう。
この本にも「聴く」ことのできる自分をつくる方法が載っています。
この方法を実践すれば、怒りっぽい方でも「聴く」ことのできる自分をつくることができるでしょう。
さあこの本を手に取って、「聴く」ことができる自分を手に入れてください。